第9回 青山俳句工場向上句会選句結果

(長文注意!)

HP上の選句〆切をまちがえたりetc.ごめんなさい。
三句出し最後となった第9回青山俳句工場向上句会、選句結果をお送りします。
過日、他の人の選句評に山口が返事めいたことをかくのは如何なものかというご意見をいただきましたが、この選句結果はわたくしめの責任編集となっておりますので、みなさんの選句評をわたしの一存で並べ替えたり、お返事めいたことをわたしが記載することは、今後も続けさせていただきたいと考えております。単なる選句結果ではなく、読み物として楽しめることを目指しておりますので、どうかご了承ください。
さて、前回もお知らせしましたように、12月は「1998年下半期 超特選大会」を開催します。「超特選大会」では、ありとあらゆる日本語を解する人々に選句していただきたいと思っております。皆様のご協力をお願い申しあげます。

向上句会とりまとめ:山口あずさ


投句:後藤一之、足立隆、岡村知昭、さとうりえ、にゃんまげ、またたぶ、肝酔、鯨酔、松山けん太、城名 景琳、船外、大谷清、来庵 恵、林かんこ、蓮、梟帥、石津優司、鉄火、はにわ(ToT) ・山本一郎・満月(以上3名、FHAIKU)、田島 健一・大石雄鬼(以上2名、豆の木)、北山建穂(俳諧新月座)、宮崎斗士・青嶋ひろの・白井健介・中村 安伸・千野 帽子・山口あずさ(以上6名、青山俳句工場)

選句協力:和田満水



全体的な感想

景琳:ちょっぴり、新しい句旋風が感じられた。

鉄火:はじめて参加します。はじめて参加して作句よりも選句の方が怖いことを知りました。それにしても足にまつわる句が目に付きましたね。

にゃんまげ:とても秋感覚にあふれているリストでした。

けん太:どこか小さなドラマがあるような、なにかロマンの序章みたいな、そんな句を選んでみました。懐かしく、こころあたたまる句と出会えたような気がします。さあ、私もがんばらなくちゃあ。

帽子:今回もスケジュールの都合でコメントあまりつけられませんでした。ごめんなさい。しかも来月は日本にいないしなあ。

満水:初めて参加します。上手い句よりも好きな句を選びました。

一郎:分かりやすい句に好きな句が少なかったので、分かりにくいけど何となくおもしろいとか気持ちいいという句を多く採ってしまった。ところで私の句、だれか特選入れて。でないと超特選句会に参加できないよー。

隆:85句から7句+逆1句を選ぶのは句をつくるより難しい作業です。どうしてもよいと思うものが12〜13句ありますので、そこを半分、全体から云えば10%に絞り込むわけですから。中々いい選句ですネ、と云われることも、よい句をつくる程、いいものと思いつつ選句をしました。

知昭:一句が与える衝撃、感動、インパクトとうのが、安易な言葉のつらなりだけでは生まれてこないという単純なことを、改めて考えました。ただ俳句の場合、言葉を受け取る基準の差というのが恐ろしいほどバラバラなので、簡単にはいかないんですけどね。

満月:今回はなんだか変な句が多かった気がする。実験か、はたまた錯乱か。いずれにしてもマンネリ青俳調ができないところがおもしろい。


12点句

象伏して冬の景色となりにけり   後藤一之

特選:雄鬼 特選:優司 特選:鉄火 特選:かんこ 梟帥 満月 建穂 肝酔 

鉄火:「象伏して」ですが、倒れて行く象を想像してしまいます。象が倒れるとそれっきり何かが終わって、そのままになりそうで怖いですね。
肝酔:動物園の動物をモチーフにした句は結構多い。これもそのひとつだと思うが、寒そうに伏している可愛らしい象の姿を思い浮かべて思わず取ってしまった。CMで動物を使えば、必ずそこそこの好感度を得られるというのと同じかもしれないが、可愛いものは可愛い。
建穂:言われてみると、象って冬のイメージ確かにある。どんよりと曇った冬の日本海なんかにピッタリですね。
かんこ:灰色の巨体をまるめてじっとうずくまっている象。寒いだろうな日本の冬は。お前の故郷は南国だもの。
梟帥:冬がお似合い
雄鬼:象が伏した瞬間、それまで象によって隠されていた冬の景色が、立ち現れてくる景が浮かんだ。象も冬の景色の一つだったのかもしれない。ともかく、象が「季節」という大きなものの象徴である。
満月:巨大なものが伏せる、と冬景色になる−−スローモーションのような、ゆっくり、しいんとした印象に満たされる。

9点句

草の穂よペテルブルグのお針子よ   千野 帽子

特選:健介 特選:景琳 清 鯨酔 一郎 またたぶ けん太 逆選:かんこ 

鯨酔:レニングラードではなくぺテルブルグであればこその共感と哀愁です。
景琳:穂が針の景色あり。
けん太:この句もよくわからない。でもペテルブルグとお針子が何となくドラマを予感させる。
かんこ:草の穂とペテルブルグのお針子って何か特別な意味があるのですか?それとも単に言葉遊び?
またたぶ:ナターシャ(タチアナか?)や、また外を見てるのかい、ピロシキが揚がったよ。    
満月:また何かの小説からつくった句でしょうか。
一郎:何か思想的な背景があるの?ペテルブルグだけに「草の穂やお針子達が夢のあと」というイメージで読んだんだけど、はずしてる?
健介:本当にすご〜く佳い句になると、どこがどう佳いのかっていうのは理屈じゃ(説明出来)ないんですよねぇ。文句のある奴ぁ…、そんな子はうちの子じゃありません。ここまで佳い句だと感服を通り越して作者が憎らしいくらいですよね。

8点句

葡萄の粒ばらばらにして猜疑心   宮崎斗士

蓮 鉄火 健一 景琳 肝酔 またたぶ はにわ(ToT) かんこ 

景琳:葡萄は疑わしい果実。
鉄火:どうも納得いかないという気になる。葡萄もこの句も。
肝酔:葡萄の実は一粒づつ房から外して普通は食べる。だから「粒ばらばらにして」は、普通ではない。それは「猜疑心があるから」ということになっていますが、とにかく「粒ばらばらにして」という措辞が面白いと思いました。
かんこ:猜疑心が起こるとホント止めようがないんです。
梟帥:粒ばらばらは多言
蓮:疑いもって思い悩んでいるうちに手悪戯をしていた葡萄は房から外れてばらばらに。情感のこもる句。
健一:ちょっと、ありそうな気がしました。「猜疑心」がよくない。猜疑心といわないで、疑っている感じが出ればいいような。
はにわ(ToT):まだ 猜疑心第一ステップかなぁ。。潰してないからね。
満月:で、葡萄の芯に何か発見できましたか?
健介:「猜疑心」と答えを出してしまわずに表現すべき。

勇気って電気檸檬のことですの?   千野 帽子

特選:あずさ 蓮 満月 斗士 知昭 安伸 りえ 

あずさ:そうざんす。
りえ:電気檸檬という嘘っぽい言葉がいい。
蓮:機械仕掛けのオレンジと梶井の檸檬が思い浮かんだ。なにか引かれる句。「勇気って電気ブランのことですの?」
満月:わっ!びりびりくるっ!これ、勇気じゃなかったらなあ。でも、ま、いっか。
安伸:「電気檸檬」は非常に存在感があります。
ひろの:「レモンの勇気」「電気とミント」。このあいだの青山の「三つのオレンジへの恋は水色」みたいだ。
健介:いや、…そうなんでしょうかねぇ…
斗士:「電気檸檬」的確なニュアンスと思える。
知昭:ただのハッタリかもしれません、今の若者の心象風景かもしれません。言えるのはこの句の勢いはすごい!それだけです。それがいいんです。

7点句

白百合は天使を抱いていた匂い   青嶋ひろの

特選:りえ 隆 雄鬼 斗士 安伸 はにわ(ToT) 

りえ:心地よい断定。そういえばそうだったっけと素直に思ってしまった。
雄鬼:天使を抱くということに、ちょっとどきりとした。天使の匂いならなんと言うことはないが、抱くということで、作者の指向性がかいま見える。
はにわ(ToT):腐った百合の匂いは嫌いです。。百合が挿してあった水の匂いも。。×
安伸:「白百合」と「天使」は多少つきすぎ加減ですが、「抱いていた」の過去形がせつなく魅力的です。
健介:「白百合」と「天使」ではイメージが近過ぎるか?
隆:どこかで同じようなのを見たようにも思いますが、確かに白百合の匂いは、ねばりつくようでしたたかです。
斗士:「いた」の余韻に一票。

6点句

玉蜀黍に宇宙へ還る日はあるか   山本一郎

特選:梟帥 特選:斗士 知昭 隆 

梟帥:あると信じて疑わず
満月:うーん、それはむつかしい。。。
隆:宇宙のたまねぎ、BSで何かそんなのやってましたよネ。
斗士:言い得て妙。玉蜀黍って、確かに不可思議な風体ではある。
知昭:46歳の女性医師や上院議員を乗せた宇宙船にはキュウリがあったそう。とうもろこしにも未来はある。がんばれ。

プラタナス冷たい指で握手する   さとうりえ

特選:にゃんまげ 雄鬼 清 健一 一郎 

にゃんまげ:そんなかんじのプラタナスが近所にあるもので・・・
雄鬼:手が冷たいのはありそうだなと思いつつ、プラタナスと冷たい指が響き合っている感じがした。
健一:ありそうな句なのがちょっと弱いですね。プラタナスはいいと思います。
満月:プラタナスの季節には指は冷たいでしょう。
一郎:プラタナスの硬質な一面が冷たい指と合っている。

歯刷毛で洗ふホイール雁渡る   梟帥

隆 斗士 鉄火 清 健介 またたぶ 

鉄火:こんな日曜日も確かにある。結構寒い日だったりする。
またたぶ:おどけたような、醒めたような不思議な感覚。ただ「雁渡る」はあまりに使えすぎるので、個人的には自戒しますけど。
満月:ホイールって、車のタイヤの?歯刷毛で洗うんですか??
健介:ピカピカにした車。「雁渡る」が佳い。
隆:何でもないことを云っていますが、ホイールを洗っている人の心が見えても来ます。ハブラシで細かく洗う姿がいいのでしょう。そこに雁が飛んで行く。その寂しさまでが清々しく思われます。
斗士:「雁渡る」微妙な味わい。

狐火のぺかぺかぺかを疑わず   北山建穂

特選:鯨酔 特選:安伸 りえ 満月 逆選:蓮 

鯨酔:幻想の美しい世界。私も宮澤賢治が好きです。
りえ:後半、着地してしまった感がある。もっと飛んでて欲しかった。
蓮:まずい句。狐火って、もっと幻想的に歌ってほしい気がする。ぺかぺかぺかっていい感じじゃない。
満月:そうか、狐火ってぺかぺか光っていることもあるんだ。こんな御時世だもの、何がおこったって!でもなんかパソコンの光って気も。半濁点の視覚的効果も見逃せない。
安伸:「ぺかぺかぺか」というオノマトペが微妙な違和感を感じさせて面白いです。「疑わず」という強い断定がとても効果的だと思います。
蓮:逆選句もそうだが、どうも、「三月の甘納豆はうふふふふ」の影響を受けたような句が割にあってびっくりする。普通の人がこれをやると衒いだけになってみっともない。それと、個人的体質として破調は苦手なので困った。

5点句

休日の解き放たれし足の指   足立隆

特選:船外 はにわ(ToT) にゃんまげ かんこ 

にゃんまげ:8cmパンプスを履いていた頃を思い出しました。
かんこ:いかにも気持ちよさそうです。
船外:休日の実感。身も心も解放されてとは思いますが、足の指一本で見事に全てを表現されましたね。
はにわ(ToT):足の指 ひろげると気持ちいいんですよね。。
満月:それで?これから短歌か何かが始まるような。
あずさ:休日で解き放たれるは付きすぎ。
健介:これは単なる理屈そのものでしょ。
知昭:「休日」が弱いみたい。ここは好きな祝日の名を入れてみてはいかが。

秋の雨白黒映画の長いキス   松山けん太

蓮 雄鬼 満月 健介 鯨酔 

鯨酔:そうよ、小父さんが見た頃の映画はネ、それ以上進めなかったんよ・・・・。スクリーンにも秋雨が少し・・・・。「余情と想像こそ美学なり」と言って小父さんは去って行きました。
雄鬼:「白黒映画のキスシーン」では面白くないが、「長いキス」としたことで、そのシーンだけがいつまでも心に残る。古き時代の生々しさと言うべきか。白黒となって永遠に継続する。
蓮:最後まで<勇気って電気檸檬のことですの?>と迷った句。白黒映画特有の画面のちらつきを秋雨にたとえた。秋のしっとり感が快い。
満月:雨は白黒映画につきものかもしれないけど許してしまう。なんていったって長い長いキスだから。
あずさ:じれったい。
健介:四畳半の部屋で深夜に放送された白黒映画に見入ってしまった。外は雨。そんな設定でしょうか。雨漏りする映画館という設定も棄て難い。「長いキス」が羨ましい。

メモ帳の余白に虹のありにけり   さとうりえ

雄鬼 知昭 建穂 鯨酔 かんこ 

鯨酔:素直でさっぱりした感傷。過去完了という事は今のメモ帳の余白には・・・等と余計な事を考えてしまいます。
建穂:感覚でつい取ってしました。「虹」は夏の季語だったと思いますが……
かんこ:なんだかドキドキします。
雄鬼:余白にガラスか何かの光の加減で虹が映っていた。余白という余った部分に虹という希望の象徴のようなものが映っているところが面白い。メモ帳ではなくもっと具体的なものの方がもっとよいのでは。
またたぶ:「メモ帳の余白に虹」という素敵な発見に「ありにけり」と続けるのはもったいないと思いますが… 文語に現代の息吹を通わせる(または茶化す)確信犯?なのでしょうか。
満月:その虹が空じゅうにひろがるといい。
知昭:気持ちのいいメルヘン。

クレシェンド・デクレシェンド秋の雨   北山建穂

特選:はにわ(ToT) 知昭 健介 優司 逆選:隆 

満水:カタカナの解らないときは意味不明であるし。解ればつまらない
はにわ(ToT):あまりにあてはまり過ぎかなと思われる音楽用語だがこれ以上捻ると素直さが欠落してしまう気がする。
満月:せっかくの音楽用語が言葉以上の効果を盛り上げないのはきっとつきすぎなのだ。
健介:洒落た表現が好きなんですが「クレシェンド・デクレシェンド」では今一歩芸が足りない感じ。例えば<クレシェンドからピアニシモ秋の雨>としてみるとか…
隆:いい選いってると思いますが、コトバ遊びとして未完成。

4点句

鰯曇肘にたこある消防士   田島 健一

清 健介 鯨酔 またたぶ 

鯨酔:鰯雲程感傷の世界に入りやすい季語はないと思いますが、現実のたこに魅かれた作者の柔軟な精神が良い。
またたぶ:このリアリティーに一本とられた。リアリティーは俳句に不可欠ではないかもしれないが、大きな力だと思います。
満月:消防士は肘にたこができるんですね。鰯雲に消防の水が高くあがる光景が浮かぶ。
健介:「肘にたこある」の意外性に「鰯雲」が上手く利いている。特選候補。消防士の人って本当にそうなんですか?
隆:こういう句はひかれます。不思議な世界です。
知昭:肘にたこができるというのはほおづえのつきすぎと見た。消防士が暇をもてあます平和な街が浮かぶ。

むこう岸の泡立草まで待ってください   満月

特選:一郎 安伸 あずさ 

あずさ:わかりました。でもこれ以上は待てませんよ。
一郎:「まで」の使い方のおかしさが新鮮で、その屈折によって句が深くなった。泡立ち草はちょっと情緒に過ぎるか。
安伸:空間と時間が混じりあったような妙な世界が心地よいです。
健介:そうおっしゃられましてもぉ…
知昭:何を待つのかを考えるかどうかが、この句を読むための分かれ道。私はこれから考えます。

足の指みなくっついて大花野   大石雄鬼

鉄火 健一 肝酔 またたぶ 

鉄火:大花野にカタルシスを感じます。ふつうの花野じゃ報われない。
肝酔:足の指句の第何弾でしょうか? それにしても足の指で「大花野」とは飛躍しましたね。手の指ではキツネの形をつくったりして遊ぶけど足の指じゃあ、本当は何の形にもならないと思いますが、それだけに何とでも言えるという伏線が効いていると思います。
梟帥:みなくっついていてはきつすぎて
健一:面白いですね。大花野がいいですね。ちょっと、作為を感じますが。
満月:足の指フェチの句がふたつめ。こんどはくっついている。それがどう大花野へ展開するのか。。。

敬老日女体の棒と化す奇術   白井健介

特選:健一 ひろの 優司 

帽子:とてもうまい。勉強になる。けどちっちゃくまとまってる。「自分が採らなくてもだれかが採る句」であり、「自分が作らなくても誰かが自分よりずっとうまく作ってくれる句」だと思う。チノボーには縁のない句だ。
健一:面白いですね。「敬老の日」が動くかどうかというところでしょうか。僕は、これでいいと思います。
満月:棒と化した老女を思い浮かべてしまった。なんともブラックだ。このごろは老人ホームで結成した老女の漫才コンビというのもあるらしいから、老女奇術も実際にあるかもしれない。
ひろの:ちゃらららら・らーん。あの手の奇術のチープなやつが、おじいさんおばあさんの前で披露されている景を思い浮かべた。あやしい。
あずさ:腰が曲がらなくなった?

実石榴の噴射孔より捨て科白   鯨酔

梟帥 一郎 はにわ(ToT) あずさ 

梟帥:いつもやってる日常性
はにわ(ToT):ふふ、欲求不満で石榴は熟れているのか (笑)
満月:ぷぷぷぷっ!ってやんでえ!おとといきやがれ!んーとあとはわかんねえやい!
一郎:この激しさに当の石榴もびっくり。何かイヤなことがあったのかなあ。
あずさ:避(ざ)けんじゃねーよ。

サフランはびしょびしょ白い雲がない   岡村知昭

雄鬼 鯨酔 安伸 ひろの 

鯨酔:焦点をはぐらかされた気が致しますが、濡れそぼったサフランへの気持ちが伝わって来ましたので、買い。
雄鬼:びしょびしょという語が、この句を引き立てている。サフランの花びらの感じが不思議に出ている。雲は雨を連想させるから、それは避けた方がよいのでは。
満月:黒い雲で雨でびしょびしょ?
安伸:最後の「ない」がインパクトあります。
ひろの:「『やりきれなさ』を十七文字で表現しなさい」という問題の模範解答のようだ。

不登校ただ三日月が好きなだけ   宮崎斗士

特選:蓮 満月 りえ 

帽子:けっこう好きだけど、説明っぽいのが残念。
りえ:こどもっぽいけど、そういうのってわかる。それだけなのに、っていう。
梟帥:ただはいらない
蓮:自分の中に響くものがあった句だった。不登校という、それなりに緊迫した状況を、ただ三日月が好きだ、だから夜更かしして、つい寝坊してしまうんだ、だから行かない、と嘯いて見せる。ふきだす一歩手前の愉快な感覚と、そこはかとない哀しさを持ったよい句だと思う。
満月:うーーむ、好きだ(^^;)。「ただ」っていうのがいい。
あずさ:いそうだよね。
知昭:それだけのことが世の方々にはわからないのよ、これが。

白桃の嘘に気づいたのは君か   青嶋ひろの

特選:満月 建穂 あずさ 

建穂:類想があるような気もするが、うまい。
あずさ:この嘘を見破るのは至難の業です。
りえ:こういうのはもう慣れっこ。
満月:あ、は、はい!あんまりうぶ毛びっしりで、こいつ、きっと外面と内面が違うぞって。。。あ、でもそんなに驚いて。。さてはあなたも。。?
健介:いえ、僕じゃないっス。

満月に窓塞がれて家鳴(やなり)かな   千野 帽子

特選:肝酔 清 蓮 

肝酔:「家鳴り」とは家が揺れることと辞書にある。とすると窓を塞いでしまうような大きな満月が出て、地震でも起きたのか。それとも宇宙人の襲来か。とにかく、何か何か地球規模、宇宙規模でとんでもないことが起こっているような気がする句である。虚構をめざす明確な作為が気持ちよい。
蓮:時節柄か、月の歌は良い。窓をふさがれてと表現するほど大きい月。率直で良い句。
満月:私が窓に張り付いたら家鳴りがするんだろうかとふと考えてしまった(^^;)。満月に塞がれると家は苦しいのだろうか、それとも楽しくて鳴るのか。

体育の日また新しき雲がくる   田島 健一

優司 船外 健介 肝酔 

肝酔:体育の日に運動会でもしていたのかな?「空模様は大丈夫かな」なんて空を見上げていたら雲が次々に湧いてきて通り過ぎていったのでしょう。何気ない、詠まれていることがすべての句ではありますが、自然の中の人間の頼りなさ、不安な気持ちがどこかに滲み出ていて、自分もこんな感じを抱いたことがあったな、と思い出させてくれる句です。
船外:体の中からリフレッシュされる。
満月:祝祭日俳句−−勤労感謝の日、みどりの日、文化の日−−イメージかきたてるものないなあ。
健介:ちょと風が強いけど天気のいい運動会の一日、という雰囲気でいいですね。

東京駅の空をはがせば銃口がほら   山本一郎

特選:知昭 りえ あずさ 逆選:ひろの 

りえ:「銃口が」で一旦切れた感があるところへ投げ込まれた「ほら」が、なんか気になって。
満月:駅に限っちゃうんですか?うーん、もっとあちこちに銃口が覗いてそう。
ひろの:好き。ふんいきが。いいまわしも。東京駅上空の空なのだろうけど、それが分かりにくいのが残念なような。
あずさ:やばい東京駅シリーズか。
知昭:意味の重たさにもかかわらず、何て気持ちのいい口調!! あーまずは何も考えずお楽しみあれ。

3点句

抱擁や龍の額に花野がある   中村 安伸

特選:ひろの 優司 

満月:猫の額は知ってますが龍の額?それだけで何かできそう。こちらは抱擁と花野で一句。
ひろの:おお。高山れおなさんの「されど龍夏草のごと臭からめ」にもならぶ好きな句。おんなじ龍を詠んだのかもしれない。季語じゃない言葉に「や」もいい。

倒産の噂話や柿の種   松山けん太

特選:隆 りえ 

鯨酔:川柳なら入選でしょう。
りえ:わりと大きめな話題から手元へ、という常套手段だけど、結構好き。
満水(選):ビールを飲みながら話している状況がよく詠めている
満月:はやくめがでろ、けいきのめ。
あずさ:月刊『柿の種』十二月号。倒産特集号。
健介:内容的には雰囲気がよく出ていると思う。この場合の「柿の種」では季語にはならないと思いますが。
隆:柿の種をポリポリ食べながら渋茶も飲みつつ、風采の上がらぬ男が二人、町の不動産屋のソファーで噂話をしている情景が見えて来ます。
知昭:この柿の種はピーナツ共々あるやつかそれとも果実か…ま、どちらでもいいんでしょう。

ちちははの恋し夜もあり鴉瓜   石津優司

特選:けん太 蓮 

けん太:鴉瓜は確かに、情話へとつながる爆弾を秘めているような色とカタチです。それをちちとははへ持ってきた。そこがすばらしい。そこに惹かれました。「ちちとはは」がひらがななのもそのイメージを一層膨らませてくれます。
蓮:一人暮しのわびしさと解釈。実感がこもっている。鴉瓜の紅さが更に郷愁を。
満月:「恋し夜」は恋しき夜でしょうか。鴉の字面はここには合わない気がします。

つねにはだかの鶏頭にぐるぐるまき   大谷清

安伸 またたぶ ひろの 

またたぶ:最初はよけたが、採ってしまった。捨て身の?エネルギー。
満月:鶏頭をはだかにしたこと、あるんでしょうか。あれは、なくなります。
安伸:鶏頭のあからさまな感じが、感覚的によく表現されていると思いました。
ひろの:鶏頭にぐるぐるまきにからみつくのは愛か。
あずさ:巻かれてしまった。

駆け上がる土手の向こうやまた花野   林かんこ

雄鬼 優司 船外 

船外:近くの江戸川の土手にて実感しました。
雄鬼:花野から土手が見えた。その向こう側には、きっと大きな川が流れているに違いないと、なぜかちょっとドキドキしながら、駆け上がるとやはり同じような花野だったという句。私も全く同じ体験をしているので共感。
満月:「や」が句切れになってない。内容は続いていて向こう「に」また、なのだから。
健介:切れ字「や」の遣い方が不適切、と僕は思う。

きっぱりと返事はしたが秋の暮れ   船外

満月 景琳 かんこ 

景琳:秋は心かわりが早い。
かんこ:やっぱり心残りの秋の暮れですよね。春の暮れなら心はもう明日に飛んでる。
満月:川柳的におもしろい。「きっぱり」の顔が秋の暮れの情景の中で俄然孤独に転換する。
健介:「秋の暮れ」の部分にもっと強い“具象(的なもの)”が欲しい。難しいけど…

柿泥棒極楽橋に見失う   松山けん太

梟帥 帽子 建穂 

建穂:面白い。しかも味がある。地名がうまく生きている。
帽子:固有名に頼りすぎかもしれないけど、ちょっと濃い風景を思い浮かべたので。
梟帥:泥棒に極楽は有難い
満月:柿泥棒にとって極楽だったんですね。

看護婦のポケット満杯に無月   白井健介

梟帥 建穂 健一 

梟帥:無月が満杯は詩
健一:「に」がよくない。「無月」は背景に徹した方がいいです。
満月:それじゃ、月は看護婦のポケットの中?おもしろいが満と無があまりにも対比させましたという感じで手の内が見え過ぎる。
あずさ:看護婦さん、お疲れさまです。
健介:[自解]「無月」の情感は棄て難いのだが「満杯に」の“に”では切りたい意向が充分に反映されない点が不本意である。したがって已むを得ず<看護婦のポケット満杯今朝の冬>と後日(設定を変えて)推敲しました。

シェパードを断り切れぬラブホテル   岡村知昭

蓮 隆 鉄火 

鉄火:とても気になります。とても。
りえ:犬同伴?
蓮:シェパードではなく、本当は犬っぽい風の男。そういう誤読で呼んだ。すると味が出た。
健介:いやぁ確か断られたって聞いたがなぁ…
隆:このシェパードは雌のシェパードをつれているのか? それとも可愛らしいポメラニアンと同伴なのか。とにかくホテルの従業員とシェパードのやりとりがいかにもこっけいで面白い。
満月:千昌夫と離婚したジョーン・シェパードはその後恋をしたのだろうか。幸せになっていればいいね。

ツッパリだったよなータツノオトシゴ   またたぶ

船外 健介 肝酔 

肝酔:これって俳句? という声も聞こえてきそうですが、やはりタツノオトシゴとツッパリを取り合わせたところに俳句らしい滑稽味、取り合わせの妙味があると思います。とにかく面白いです。
船外:そうでしたか。あたしゃ一度もツッパレなかった。
満水(選):タツノオトシゴは確かにツッパテいる
満月:素材が好きなんだけど、タツノオトシゴがオチになっていて残念。
あずさ:おもしろいけど、選ばない。
健介:ここまで面白いとねぇ…しょうがねぇ点入れちゃうかぁ…

犬の世に少女歌劇は残るかな   中村 安伸

帽子 一郎 ひろの 

帽子:残るかな…って、残らんだろうな。
満月:猿の惑星?犬の生活?
一郎:なんだか分からないけど、採ってしまった。
ひろの:中村さんの「人間の化石たくさん林檎の世」を思い出したけど、こっち(犬の世)の方が好き。たしかーに! 固定ファンを掴んでるものは世界がどうなっても強いにちがいない。
隆:犬が少女歌劇を見ている光景は実に面白い。この句好きです。
知昭:犬の世に「少女」の概念があればね。

丈夫と言っても西瓜の皮程度   山口あずさ

特選:帽子 ひろの 逆選:鉄火 

帽子:なーんだ、その程度か。じゃ、その気になればチョロイよね。
りえ:けっこう丈夫そうですね。
満水(選):スイカの皮の比喩がよい
満月:あ、そうなんですか。って何?面の皮?
ひろの:季が効いている、もとい気が利いている句だと思います。日常会話の中にぽん!とおいても違和感がないのではないだろーか。
隆:納得です。なる程そうか、と思います。
鉄火:挑戦的なものを感じます。

きりぎりすいつかどこかで吉野屋へ   肝酔

帽子 安伸 けん太 逆選:景琳 

景琳:遊び者、安く早い吉野屋へ。
けん太:歳時記には、きりぎりすは野性的な鳴き方が面白がられる、とある。この句も面白でにとらえると捨てがたい味がある。
帽子:「どこかで吉野屋へ」は日本語としてなんだかよくわからないけど、なんとなく納得させられたので。
満月:お知らせ きりぎりす丼はじめました  吉野屋−−−あ、吉野家か。
安伸:「いつかどこかで」と回想するふりをして、妙な世界へつれてゆく手腕に脱帽します。
健介:「吉野屋」ですからねぇ…「いつかどこかで吉野屋へ」っていうほどのものでもないと思うんだけど、だから逆に妙に可笑しい。う〜ん…「きりぎりす」。

2点句

かしわの樹にうつかりと祖母にあいたし   大谷清

一郎 ひろの 

満月:うつかりと、ですか。うつとりだったら少しはわかりそうなんですが。
一郎: 不覚にもという感じがいい。
ひろの:会いたくなっても会えない人に「うっかり」会いたくなっちゃったのでしょう。つらいね。
あずさ:おばあちゃんにはとっても会いたい。

秋灯を点けて夫待つ貌となり   石津優司

景琳 あずさ 

景琳:秋は暮れはやく、待つがでてる。
帽子:カルチャーセンター俳句教室のおばさん臭。
りえ:どこかで見たような。
満月:身近で小さな情景を書くのはある意味で好ましいが、それにしては言葉や字に凝ろうとしてでこぼこ道になった。もっとゆったり言葉をほぐして詠んでほしい。
あずさ:迫真に迫る妻ですね。
健介:非常によく遣われる手(構成)です。内容の面ではここは素直に「待つ顔」でいてもらえる身を嬉しく思っておくことにしましょう。

秋の虹マラソン選手のいま来た道   田島 健一

船外 かんこ 

かんこ:秋の虹にマラソン選手が効いています。爽やかです。
船外:小雨決行、だが帰路には虹が。ふんばって1人や2人抜いてみるか。
満月:その道に虹が出ていたのだろうか。「いま来た道」ではマラソン選手が消えてしまって光景が浮かばない。
知昭:思い悩みます、何故にマラソンは冬の季語なんでしょうか。

足濡らしたまま秋に入る金魚の碑   満月

特選:建穂 

建穂:この人の感性はすごい。足濡らしたままか……いやぁ、すごい。

秋の川祈りて渡る人のあり   林かんこ

健一 けん太 

けん太:着想は古いのだけれど。きっちり俳句になっています。
健一:「祈りて」「渡る」「あり」と動詞が3つもあるのがうっとおしいですが、「秋」がきいてますね。「秋の川」だからいいですね。
満月:ヘッセの「シッダールタ」。いや、臨死の光景か。ルノワールの「水浴する人」がミレーの「晩鐘」に嵌まったみたい。後光が見えるようだ。−−ああ、いっぱい思い浮かべてしまった(何という中学生的ラインナップ!)。ここで笑っちゃいけないよね。

白萩や巫女消えてゆく霧の湖   船外

優司 清 

満月:白萩、巫女、霧の湖−−−みな霊的存在を感じて一句のトーンが平板になってしまった。

土踏まず萎びにけりな神の留守   後藤一之

梟帥 帽子 

帽子:腰折れ短歌の上の句みたいだが、この句にかぎってそこが愛嬌になっている。不思議不思議。
梟帥:神有月は水虫に
満月:花の色はうつりにけりな、土踏まずは萎びにけりな??うーん、神も留守したくなるかも。。
隆:自分の足? 父母の足? 祖父母、誰の足かによって、いろいろ連想がひろがります。

聖き目の牛たち載せてトラック行く   林かんこ

にゃんまげ けん太 

にゃんまげ:どなどなど〜な、という感じがなつかしくて。
けん太:聖なる目の牛たち。その目のつけどころに、共感しました。
帽子:「ドナドナ」?
りえ:ドナドナの世界ですね。
満月:どなどなどーなーどおなーーーー♪
健介:“ドナドナ”の世界。好きな世界ではあるんですけどね…
隆:ドナ・ドナの世界が俳句になりました。いい句です。

宵冷や言葉の薄き受賞作   梟帥

知昭 はにわ(ToT) 

りえ:句の言葉自体が薄いよ。
はにわ(ToT):まぁ こういう地に落ちた権威もあるものなのです。
満月:うう、冷える。
あずさ:よくあることさぁ。
知昭:せめて私達は濃い言葉で句を作りましょうや。

足を褒めて両手で受ける黒砂糖   宮崎斗士

鉄火 けん太 

鉄火:なんだかうらやましい人間関係ですね。「黒砂糖」が絶妙。
けん太:正直なところ、よく意味はわからない。でも黒砂糖がつくるであろうドラマに惹かれる。「を」をとって五七五にした方が情念が伝わる。
満月:うーむ、またまた足フェチ登場。今度は黒砂糖が出てきた。。。
知昭:入れものがなかったのねえ。

東山魁夷秋刀魚にはらわたあり   大石雄鬼

梟帥 斗士 

梟帥:はらわたを美しく文化勲章
満月:東山魁夷はよろこぶでしょう。
健介:「東山魁夷」との関連が何かあるのかを存じませんで…すみません。
斗士:感覚に惹かれた。
知昭:今回は3句人名を使った句がありましたが、句の世界を作っていたのはこの句だけと言っていいでしょう。

仲直りしてきた君は夕焼けの味   にゃんまげ

斗士 鉄火 逆選:健介 

鉄火:こころに沁みますね。
建穂:かわいい。
斗士:「夕焼け」成功。
あずさ:さわやかっ。
満水(特選):はにかみながら仲直りしたのであろう。明日からまた楽しい日々が始まりそうだ
満月:少し間延びしているが「夕焼けの味」がいい。
健介:「君」は誰と「仲直りしてきた」の?“仲直りしたての君は”とかなら解るが…

1点句

庭先はタクシーの車庫芙蓉の実   梟帥

隆 

満月:タクシーの運転手さんでしょうか。「芙蓉の実」はたまたまそこにあった実景でしょうが、効果が出ていません。
隆:光景としてはっきりしています。個人タクシーの一家の生活が見えてくるような思いです。
知昭:この車庫の主は個人タクシーの人ととりたい。年は初老、勤務30年でようやく資格を取り、家族は…、って考えてしまいました。

雁がねの飛たる空の赤さかな   蓮

船外 

船外:目撃!見事な大軍が西へ渡ってゆきました。
りえ:「飛び」の「び」が抜けてると思うのですが。それとも別な読みなのか?
満月:空の赤さにどんな印象を持てば雁がねと響きあうか、、手掛かりが足りない。

わが家とは夕べのカレー朝寒し   肝酔

隆 

鯨酔:一晩置いたカレーの味は我が家では奪い合いとなりますが・・・。
満月:とても庶民的光景だが、夕べの情景と思っていたら突然朝でとまどってしまった。
隆:そうですネ。カレーは一晩寝かせた方が旨い。
知昭:煮込めば煮込むほどいい味を出す、ということでしょうか。

天高く頬に女優の死亡記事   中村 安伸

一郎 

満月:「頬に」はなぜかわからないが突飛で、そのあたりで何かを感じるのかもしれないと思ってしまう。
一郎:意味は分からなかったが、言葉がぴしぴしと小気味よく決まっているので採ってしまった。

偏差値や紅葉且つ散る秋津州   後藤一之

知昭 

満月:偏差値に散る紅葉を合わせたのは侘しいがどこか定番的発想。紅葉、秋津州と大上段に「ニッポンの叙情」的道具立てを揃えたところは笑える。しかし漢字が多い。
あずさ:偏差値と紅葉は効いているが、散るで「サクラチル」を思い出してしまった。
知昭:「偏差値」とちょっと時代がかった言い回しとのバランスが絶妙。

耳掻き一杯ヒソヒソ話し   はにわ(ToT)

景琳 

景琳:ないしょの話は少し分。
りえ:「ごはんですよー」と続けたくなる。
満月:NIFTY FHAIKUで「砒素砒素ばなし」という連作タイトルがあったので、カナではインパクトが弱いと思ってしまう。「耳掻き一杯」のコワサは買う。
知昭:時事は詠みづらいというレベルじゃない。逆選にも値しないですな。
あずさ:ちょっとばっちぃ。

軒の玉葱に今日の運勢みてもらお   山本一郎

景琳 

景琳:タマネギ占いあり(芽の出方)
満月:軒玉占い。
あずさ:目にしみる
知昭:えーい、なれなれしくしないの。

松まいにち赤に老婆が向かう   大谷清

斗士 

満月:判じ物??松が赤い枯れ葉になるのを老婆が取っている光景でしょうか?
斗士:「赤に老婆が向かう」の膨らみ。

コンビニやAM2時の高き空   蓮

りえ 

りえ:ちょっと実感がうすいような気はするが、夜空が高いというところがいいなと思った。
満月:コンビニに「や」をつけても広がらない。

枯葉舞うスローモーションでもう一度   肝酔

景琳 

景琳:落ち葉の数はおおい。
満水(選):次々と落ちてくる木の葉にはゆっくりしたのもあるだろう
満月:はい、スイッチ、オン!
知昭:普通一般に使われてる言葉をよく皮肉に変えましたね。

活火山は頭なくして菊咲けり   大石雄鬼

健一 

健一:おもしろいです。「なくして」の「て」がよくない。ここで切った方が句が凛としますね。
満月:活火山氏は頭がなくて、かわりに菊を咲かせているのである。

沼涸れて何やら動き出す気配   北山建穂

かんこ 

かんこ:地球はいったいどうなって行くのだろう・・・?
満月:「何やら」でせっかくの「沼」の怪しさを消す人間臭い興味津々の目が出てきた。
知昭:「マクベス」だったら森が動き出す。

水溜まりはぐれて来たるあめんぼう   船外

鯨酔 

鯨酔:あめんぼうに対する優しい眼差しと詩情が生きています。
満月:「はぐれて来たるあめんぼう」はいろいろ思えるが、「水溜まり」はいらない説明。

ほお散るはあかるし負う子なき背中   またたぶ

けん太 

けん太:「負う子なき」とは・・。「ほお散る」に明るさを見いだすとは・・。古いドラマを感じてしまう。
満月:一瞬、回文かと思った。句切れが二か所にある感じ。「ほお」最初頬かと思った。ひらがなではぴんと来ない。
健介:何故に「負う子なき」なのかが判るように作られているともっといいと思います。

背中だけ汗かいている冬隣   さとうりえ

はにわ(ToT) 

はにわ(ToT):冷汗かしらねぇ。。。それとも背中だけ興奮?
満月:背中の汗。。。あんまり訴えかけて来ませんでした。

ごきぶりや秋はのっそり圧しかかる   鉄火

肝酔 

肝酔:これも「のっそり圧しかかる」という措辞が面白いですね。ただし、「ごきぶりや」と上五で切って秋は以降の中七下五に至る流れにどこか無理があるような気もします。でも沈鬱なというほどでもないがなんとなく重苦しい秋という季節の捉え方は斬新だと思います。
満月:秋のごきぶりは何だかわびしい。いっそ冬になればこれがまた生き生きと(^^;)!

ゴンチチに癒され秋の扉開く   来庵 恵

あずさ 逆選:りえ 

帽子:似たようなことを考える人は多い。じつはチノボーも去年俳句はじめたとき、「ゴンチチがゆるす自堕落半夏生」というのを作りました。
あずさ:ゴンチチは人を癒す。確かな発見。
りえ:固有名詞の持ってきかたに不満があったので。ゴンチチと「癒し」って、すごく近いと思うけど。
満月:ゴンチチを知らない人はどうしたらいいの?
健介:詳しくは知らないんだけど「ゴンチチに癒され」ではちょっと常識的過ぎるのでは? さらに「秋」との取り合わせが“だめ押し”の付き過ぎという感じ。
知昭:固有名詞使用の一例以上のものはないねえ。

吊革を磨くべからず秋の暮   岡村知昭

帽子 逆選:鯨酔 

鯨酔:「この土手に登るべからず警視庁」要は詩が感じられるか否かで、残念ながら小生には感じられなかっただけの事です。(面白いと感じる人も多い訳で、それが俳句の良さでしょうか)「秋の暮」も「鳥渡る」と同じ位付き易い季語です。それだけに抜き差しならぬ上五中七であって欲しいと感じました。悪しからず。
帽子:「この土手を登るべからず 警視庁」を思わせる。しかも下五が「秋の暮」。さては確信犯だな。
満月:え?秋の暮って吊革を磨いちゃいけなかったんですか?どうしよう。。
あずさ:ばっちぃ。
健介:どうして?

右の手で掬う右脳の欠落部   はにわ(ToT)

帽子 逆選:満月 

帽子:はやく救急車呼びなさい。えっ? 地雷原なの? じゃ、しょうがないなあ。
満月:先月(あたしゃ満月だけども)左の手で左の目を覆うというのがあった。これはなんだか滑稽と陰惨が交錯して、どっちかというと勝手にしてと言いたい。
健介:“左手で”だったら採れたかも。

幼き日祖母作りたる蕎麦がきや   蓮

船外 逆選:斗士 

船外:私もそれっきり食べていません。
帽子:これでは蕎麦がきが祖母を作ったことになるような気がします。そばとそぼってそりゃ似てるけど。とすると作者にも蕎麦の血が脈々と…。蕎麦アレルギーの人とは結婚しないでね。
満月:作文ぽい。
健介:そもそも「蕎麦がきや」という結び方は疑問。
斗士:単なる思い出話。

その他の句

勃然と小型飛行機牛蒡引く   鯨酔

満月:飛行機が牛蒡を。。。しかも勃然と???どういう光景なのか。。。

ストレスや布団たたきで怨みだし   城名景琳

りえ:布団がいたんじゃうから、ほどほどにね。
満水(選):川柳調であるが、状況はよく現れている
満月:布団たたき「が」怨みはじめてほしいなあ。
あずさ:見えすぎ。
知昭:同質の言葉が揃うとつらい。

秋扇きらめき回るルーレット   またたぶ

満月:ルーレットと秋扇。熱くなってるんだろうけど、なじみのない状況なので想像しにくい。
あずさ:マカオあたりのカジノかな。

点滅の地表を動く深夜便   足立隆

満月:地表が点滅しているのか深夜便が点滅しているのか。素直に読めば地表だが、そうすると深夜便から光が感じられにくくなる。
隆:「点滅の」は「点滅し」が正しいのですが、小生の投句が違っていたかもしれません。しかし「…の」でもいい感じです。新しき発見です。前回の<高圧線二十世紀の芒原>、二十世紀が梨という読み方も作者にしてみれば有り難いことです。これが俳句のスリルではないでしょうか。
あずさ:投句を確認しました。とりまとめ人(山口)の間違いのようです。ごめんなさい。お言葉に甘えてこのままの表記とさせていただきました。

バイバイとススキが揺れて秋別れ   城名景琳

りえ:だぶりだぶり、かぶりかぶり。
満月:バイバイと言えば別れ。「秋別れ」という言葉にはちょっと無理を感じる。
あずさ:「バイバイとススキが揺れる」のはちょっと好きだったが、ここで「別れ」と言ってしまっては、俳句がもったいない。
健介:「ススキ」は漢字にすべき。「秋」と言う必要がどこにあるというのだろう?
知昭:「秋別れ」ねえ。ススキってのはそのものがさみしさをイメージさせるだけにねえ。

フウテンや踊るしかしに泣くかかし   山口あずさ

満月:「しかし」って踊るんですか?単なる地口じゃおもしろくもなんともない。

椅子夢見るゆめこいなどは、ほほゝゝゝ   満月

あずさ:「ゆめこいなど」がよくわからなかった。椅子が恋を夢見るなどは、という解釈もありかな? ドグラ・マグラ的妖しさがあるような。。。

すすきくうき掃除したる秋の風   城名景琳

満月:なんだかわからないけど、すすきーくうきーそうじって語感が秋風。

名月や照らせ前世の迷い道   来庵 恵

満水(選):見つかったらどうするのであろうか
満月:お寺の回廊に貼りたい。名月に照らせと言ってるのだから「や」は変。
健介:「名月“や”」と切るのは適切でない、と僕は思う。

聞こえきしトルコ行進曲秋思   白井健介

りえ:聞こえきしはちょっと無理矢理かと。
満月:運動会?テンポのいいトルコ行進曲もこう懐かしい曲になってしまっては、秋思もむべなるかな、ですが。
健介:[自解]「聞こえきし」というのが全くの無駄な表現であったことに気付きました。

出でよ歌神 百万匹の蛇を抱いて   青嶋ひろの

満月:神、蛇といえばメドゥーサが一番に出てきますが、二番目には何も出てきませんでした。なんだか気持ち悪い。。

2回3回リボ核酸の大氾濫   はにわ(ToT)

満月:あのう、思われたことが想像できるように書いてください。
あずさ:リボ払い?

乱倫を諌めし時ぞ鉦叩   鯨酔

逆選:知昭 

満月:乱倫を諌めることのできる相手は友人か兄弟か。半分うらやましいのかと思ったら鉦叩が出てきて突然、シビアになった。それにしても乱倫って言葉、なんか大時代。
あずさ:鉦叩ぐらいの音ではどうにも諌めきれないのではないかと。。。
健介:「分かっちゃいるけど止められない」ってな訳でねぇ…
知昭:「お気持よくわかる」だけで終わり、広がりがないというのが理由。

中宮に登ればかへで秋世界   石津優司

逆選:あずさ 

満月:中宮の位に上るということでしょうか?それとも中宮という建物がある?
あずさ:「かへで」で「秋世界」ってこたぁないでしょ。
健介:少なくとも「秋」は要らないんじゃない?

秋の夜のヨーヨー・マのチェロ胸焦がし   来庵 恵

逆選:帽子 逆選:肝酔 逆選:安伸 

肝酔:ヨーヨー・マのチェロは私も好きです。でもそれを俳句に持ってきたからと言ってそれだけではどうということはないのではないでしょうか。有名芸術家or芸術作品のイメージは確かに利用しやすい素材ですが、私はそれより無名の作者が何もないところからひねり出した、そういう句が好きです。
帽子:「ヨーヨー・マのチェロ」はたとえば「ゴンチチのギター」というがごとき冗語なり。「胸焦がし」の部分は、自分がいかに感受性の強い人間であるかを主張する「風流ぶり」。
満月:ヨー・ヨー・マを知らない人は楽器職人の名前と思うかも。
安伸:まあ、この句がいちばん悪いわけじゃありません。
健介:「秋の夜」らしくなり過ぎたか? 全部言い尽くしちゃってますしね。

レ骨ン骨ト骨ゲ骨ン   山口あずさ

逆選:梟帥 逆選:健一 逆選:一郎 逆選:はにわ(ToT) 

建穂:いやぁ。これはすごい。究極の一発ネタ。取ろうか取るまいか迷いました。
りえ:どうよむのか悩みました。みなさんはどうでしたか?
梟帥:イラストくらぶに如何
健一:文字化けかと思った。こわい。
はにわ(ToT):俳句は絵画ではないし、言葉として認識できないものは俳句ではないでしょう。
満月:こういう視覚的効果の高い句によわいんだなあ。できれば最初と最後にも骨が欲しいくらいだ(^^;)。ただ、思いつきの視覚効果以上のものがないので残念。
一郎:逆選に採ったら作者の思うつぼ?。あずささんの「点滴」の句にヒントを得て作ったか?バス旅行でガイドさんが出すクイズみたいだ。「これは何でしょう?」って。
健介:デザインのセンスが素晴らしいです。
知昭:縦書きだったらもっと見栄えしたと思います。
あずさ:[自解]この間、健康診断でレントゲンを撮った。「息を吸ってぇ、はいっ、とめてっ」。レントゲンって痛くないんだよね。