すっかり秋になりました。 食べ過ぎに注意しつつ、第27回、青山俳句工場向上句会選句結果をお届け します。 投句:宮崎斗士,千野 帽子、けん太、白井健介、満月、中村安伸、いしず、朝比古、凌、鬼灯、またたぶ、ぴえたくん、足立 隆、杉山薫、古時計、明虫、し んく、洋子、南天、(h)かずひろ、主水、いちたろう、たか志、秋、 山口あずさ 感想協力:和夫、後藤一之、岡村知昭 全体的な感想: またたぶ:あまりにも自分が不調だと他人の句を云々できたものではない…と ひとしお思った。 満月:つっこみがなくなりました。皆さん、落ち着いて俳論や俳句談義に出て きてくださいね。もう揚げ足取りや誹謗中傷はありません。初心者袋叩きもあ りません。いろいろな試みをしてください。楽しみにしてます。 朝比古:ここのところ工場句会において、自分の句で「車」を連発していたの で、お題の「車」は少々きつかった。車椅子・歯車・車座・・・。俳句的word 結構あるんですよねぇ。 けん太:摂津幸彦の句集を読んだ後に選句してしまいました。で、意味より言 葉の持つ生命みたいなものに目がいってしまいました。どうも句の意味を考え てしまうくせがあって。今回の句はなんとなくぼくに安らぎをくれたような気 がします。 和夫:わけもわかず遊びに来ましたが・・・・、失敬。 凌:観覧車、体操、叔母、銀河鉄道、探偵、う〜ん。これ自己反省。 ぴえた:その回毎にレベルをおっしゃる方があって驚いています。個々に真摯 に参加したいとぴえは考えています。 (h)かずひろ:山口あずさ様がおっしゃるように、リアルワールドは容赦ないで す。確かに。 薫:最後の一句が選べなくて悩みました。選句、遅れちゃってすみません。この 場をおかりしてお詫び致します。 いちたろう:なんとも言えないです。今までここまで選べないことはありませ んでした。1句だけ選ばせていただきました。先日、観光地で景勝地を読んだ 素人句集に目を通す機会があったのですが、それを読んだときに「やっぱり青 山俳句工場はレベルがちがう」などと思いました。今回はなんだかよくわから なかったです。むずかしかったです。 健介:ついつい一日中オリンピック中継を観てしまい、夜は眠ってしまう。ほ |
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かのことが何も手に付かない。こんなお馬鹿な私はどうしたらよいのだろう? 困ったもんだ… 15点句 車座のとけてそれぞれ赤蜻蛉 足立 隆 特選:健介 特選:斗士 特選:洋子 あずさ けん太 ぴえたくん ま たたぶ 安伸 主水 朝比古 南天 明虫 またたぶ:「それぞれ」よりもう少しいい措辞が見つかったら…でも、地味さ がいい。 満月:今まで人間たちが座を組んでいたと思ったのに、とけるとそれぞれが赤 とんぼの集合体で、ばらばらに空に拡がってしまった・・・なんとも怪しげか つ童話的で不安を催すいい光景。 あずさ:オーソドックスな句。基本的にへそ曲がりのわたしではあるが、好感 を持った。 朝比古:車座かぁ。赤蜻蛉は郷愁の季語ですねぇ。結構このつき過ぎ感は好き。 安伸:車座の「とける」ところに着目したのがいい。 南天:とても素直な気持ちよさ。 けん太:「それぞれ」は理屈なのだけれど。切れの微妙な転換が自然で楽しい。 ぴえた:アカアキツって読んでもいいのかな?読ませて下さいね。秋風が(語 られてなくても)心地よい散会。気持ちいい作品ですね。 斗士:「赤蜻蛉」が淋しさと満ち足りた感じをうまく出している。やわらかさ が身上。 健介:「それぞれ」という措辞がまことに絶妙!この句を決定づけましたね。 明虫:とけて赤蜻蛉になる、という変容に同感。句がおとなしい感じがした。 知昭:(選) 11点句 月夜から戻ってこない一輪車 凌 特選:いちたろう 特選:隆 しんく 鬼灯 薫 健介 古時計 秋 朝比古 満月:E.T.? 秋:一輪車に乗って月へ昇って行く景が浮かびます。宮沢賢治の世界のような 澄明な哀感が残ります。 朝比古:続E.T…?こういうメルヘンもあっていい。 しんく:何物かに拉致されたような不気味な感じ。 古時計:戻ってこないが気になります。 薫:一輪車が月夜の日から戻ってこないのですね。一輪車が月夜そのものへ行っ てしまったのかも。 鬼灯:最初見たときは、メルヘンと思ったが、月夜でもいろいろな事件が起きる 世の中だもの?追求しないのがベスト。 いちたろう:「ハーメルンの笛吹き男」は子供達をひきつれてどこかに行って |
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しまいました。月夜の明るい夜に、いなくなったのは一輪車なのか、それを 操っていた子供なのか、あるいは子供のことにはふれるべきじゃないのか、よ くわかりませんが、月夜に、どこかちがう世界にとんでいってしまったような 気がします。他界、異界にあこがれる心理を題材に多くの文学作品がつくられ てきましたが、この句もそのような作品に連なるものではないかと思います。 健介:う〜ん……宜しいんじゃないでしょうか。 一之:(選) 9点句 熱帯夜人魚の回す観覧車 けん太 特選:薫 特選:古時計 (h)かずひろ あずさ またたぶ 鬼灯 隆 またたぶ:カロリー過剰な構成と思いつつ、人魚からにじむ寂しさが熱を中和 している印象。気になる。 満月:全面ファンタジー映画のよう。かなり甘い。 あずさ:この観覧車は、半分は海に浸かるのでしょうね。きっと。 (h)かずひろ:人魚にも煩悩があるのだろう。やはり。 鬼灯:本当は人魚では不満なのですが、でも回すのはやり人魚が一番ですか。 古時計:回すという言い方に少しひっかかりましたが人魚の観覧車と熱帯夜の とりあわせにとらされました。 薫:熱帯夜の悪夢にぴったり。 7点句 夜汽車からはじまる私立美術館 鬼灯 特選:明虫 特選:凌 いしず 帽子 満月 またたぶ:このイントロならぐんととばしてほしかった。「私立美術館」は予 想範囲内。 あずさ:「夜汽車」と「私立美術館」の掛け合わせは、夜汽車が絵になりすぎ るためか、近すぎるような気がする。 満月:とても美しい。<私立美術館>というような、ちょっと固い漢語づか いは実はあまり好きではないのだが、これは文句なくいい雰囲気を作り出 している。 明虫:美術館というと公的な印象がつよいが、私立(私設)美術館となると途 端に思い入れの深い秘密めいたものになる。そこに着目したのに同感。「はじ まる」がストレートすぎる感じだが。 凌:よく解らないけど良い、と言えばまた無責任の誹りを受けそうだが、解ら ないなりに納得させられてしまう言葉の力というか、「夜汽車」から「私立美 術館」に至る言葉の展開に、どこにでもある風景を見せられているように違和 感がない。摂津幸彦の「路地裏を夜汽車と思う金魚かな」(だったかな)を思い出 した。 健介:「私立」というのが効果的に機能していない感じ。むしろ印象のうえで マイナスのように思えますが…。 |
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裏切りし伯母かも知れぬ山葡萄 ぴえたくん 特選:あずさ 特選:いしず (h)かずひろ けん太 主水 あずさ:伯母の裏切り。。。「山葡萄」に納得です。 またたぶ:(悪いとは思いませんが)ここの第一回の投句から読んでいるので、 新味が感じられなかった。青山臭い。 明虫:伯母、裏切り、山葡萄というみんな否定的で遠い存在。つき過ぎが気に なる。心理的な句は面白いのだが。 満月:どうしてこうリアリティがないんだろう。言葉面だけで作っている感じ がする。<山葡萄>が言葉だけで、実物の存在感、実体感とか香り とかまわりの藪とか匂いとかがこっちに来ない。なんだか絵に描いた山葡萄の ある部屋でのオハナシというような。 けん太:きっちりとした切れが生きている。ちょっと思わせぶりなのが特選に なれないところ。 (h)かずひろ:毒味役は義理の父親。 風車ぼくのネジ巻く神楽坂 いちたろう 特選:主水 (h)かずひろ けん太 秋 南天 洋子 南天:「ぼくのネジ巻く」ストレートな表現だけど、共感。神楽坂も生きてる と思う。 けん太:最後にボクの好みを入れました。神楽坂に惹かれたのかな。 (h)かずひろ:神楽坂のツインスターのダンスフロアを想像しました。 満月:<神楽坂>はここではなにか滑稽に見えるんだけどなぜだろう。<風車 >ともつきすぎの印象。ところで<風車>は春の季語なんですが、いいのか な? 秋:三段切れになっているように見えますが、三つの素材から響いて来るもの があったので、面白いと思っていただきました。軽い心象、春の気だるさをう まく表しているのではないでしょうか。 6点句 いなびかり失恋体操しています 洋子 特選:しんく あずさ 薫 健介 古時計 あずさ:どんな体操なのか見てみたい。 古時計:一瞬の恋はすぐ終わるもの失恋体操がいいです。 薫:失恋体操って、どんな? ストロボに光る手足。ほどなく降りはじめる雨。 しんく:その体操教えてほしい! 健介:「いなびかり」がほどよく効いて……それにしてもこの「失恋体操」っ てどんなのかひどく気になる。見たい。(もし男だったら私は許さん!待てよ、 もしやラッキィ池田か? んなわけないか。) 満月:なんだか要素が少ない句と感じるのはなぜだろう。<失恋体操>なるも のが思い浮かばないせいか。 一之:(選) |
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5点句 戦車からフジワラノリカの白手袋 中村安伸 特選:鬼灯 凌 ぴえたくん 斗士 斗士:キャラが立っている。カタカナ表記も的確。 満月:ははは、出てきてもおかしくない。フジワラノリカと白手袋はすごく 合ってる。 凌:「フジワラノリカの白手袋」を知らないが、それなりの映像が見えるのは テレビからの断片的な情報によるものだろう。振られているのか、干されてい るのか、「フジワラノリカの白手袋」(フジワラノリカはここにはいない)は、戦 場の埃まみれの戦車こびりついて鮮明である。しかし、凱旋パレードの戦車と 白手袋なら、たとえ「フジワラノリカ」であっても私はいらない。 ぴえた:片仮名表記が戦慄を誘う、死体に呼び寄せられる感触のする、怖い作 品だと思います。 鬼灯:面白い!名前をカタカナで書いたのが成功している。 健介:♪わたしぃ〜の恋はトップシークレット♪…などと音程の覚束ない飯島 愛のプロモーションビデオを思い出しちゃいましたね、私は。 ストライクゾーンを壁に描く晩夏 朝比古 特選:健介 特選:秋 斗士 満月:なかなかいい。くっきりと白チョークで引かれる円形。晩夏という疲労 の蓄積した時期に、ねらいを定めるためにはくっきりと的を絞らなければなら ない。「気を取り直して行こー」という感じで、好きな句。 あずさ:ある種の諦念なのか。イメージが今ひとつ掴みきれなかった。 秋:しっかりとした存在感をきっちり書かれていて大変感銘しました。 健介:こちらを特選にしようか迷いました。佳い句ですからね……。 一之:(特選) 知昭:(選) 土曜日の悦楽深し月の骨 杉山薫 特選:またたぶ (h)かずひろ あずさ しんく またたぶ:「土曜日」がどう効いているのかは?ですが、風葬された骨が月光 と交わっている設定で味わわせていただきました。 満月:うっわーー、退廃。<土曜日><悦楽深し><月>みな、おんなじ側に あるような。<月の骨>がむずかしいところ。 あずさ:月に骨があるという発見に一票。 しんく:確かに週末の悦楽は深い。 (h)かずひろ:悦楽も毒も骨に染みいるもの。 |
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手を上げると霊柩車が止まる 満月 特選:南天 鬼灯 主水 明虫 逆選:隆 またたぶ:ブラックながら採ろうかなーと魅かれました。ただ、どうしても「手 をあげて此の世の友は来りけり/紀音夫」と比べてしまうのです。 あずさ:笑うセールスマンのノリ。 鬼灯:不気味!本当に止まったらどうしよう。その時は、にっこり笑って「この 次は私がお世話になります」と挨拶?でもしようかな。 南天:メメント・モリ。自分が乗る霊柩車がすっと止まったときの静けさを思 いました。 明虫:不思議な世界を予感させて、足を踏み入れたところで画面が消えてし まった。欲求不満がのこる。あとに七七を付け足してほしい。(!?) 一之:(選) 4点句 わたくしに水車ありけり敗戦忌 宮崎斗士 鬼灯 朝比古 洋子 隆 明虫:水と敗戦、終戦、原爆の連想はかなり詠われてきたみたいだが、それ以 上に「わたくしに」の5文字がもったいない。一人称の場合私を言わないか、 せいぜい我(われ、わが)の二文字で十分と思う。 満月:<水車>がなんなのか。そのまま本物の水車が当時生活に役立ったのだ ろうか。ちょっとわからないことで、その点かなり無理なのでは?<ありけり >が大仰でますます<水車>の重要性がわからないと読めないなと思う。た だ、どんなところからでも立ち直ってくる感じ、湧出感はとてもいいです。 朝比古:水車かぁ。この観念はわかるような気がする。「敗戦」とあえて言っ ているところが眼目なのだろうが、個人的には嫌い。 鬼灯:<わたくしに水車ありけり>この透明感のあるフレーズが好き。ただ<敗 戦忌>では収まりすぎ。 弟の新車禁煙秋彼岸 白井健介 いしず ぴえたくん 朝比古 斗士 満月:その車の中で煙草を吸うと、煙とともに彼岸へ行ってしまうんだろう な。 朝比古:「ん」のリズムがちょっと面白い。「秋彼岸」は違うなと思いつつも、 捨て難いような気もして・・・。 斗士:法事かな。設定の鮮やかさに。 ぴえた:空気がきれいな作品ですね。弟へのやさしい眼差し。弟自身煙草を 断って苦しんでいるのがわかるからおかしみもあります。 一之:(選) |
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どくだみの蝶々結びの間柄 古時計 特選:安伸 帽子 凌 満月:<間柄>がオチになっているように思う。 あずさ:どくだみがいいかどうかは今ひとつわからないが、「蝶々結びの間柄」 という関係性に惹かれる。 安伸:「蝶々結びの間柄」というかわいくも不気味な表現がどくだみに似合う。 摩尼車月の軌道の細りたる 杉山薫 特選:(h)かずひろ 満月 隆 満月:これ、「車」の題で出た単語のぴかいちでは?よくぞ思いついた。ん?今 は逆引きの辞書というのもあるか。。。細った月の軌道というのも今の世にとて も実感があるが、そこにある<摩尼車>は、それを修復しようと祈っているよ うで深い祈りを感じてしまう。 (h)かずひろ:末法思想は習慣性があります。乱用にはご注意ください。 3点句 三日月は俺には狭し車海老 山口あずさ 特選:ぴえたくん 薫 薫:肥満した車海老。いや、オレの器は三日月なんかにゃおさまらないぜ、とい うことでしょうか。言い切られると。 ぴえた:形が似ていてつきすぎって思う人もあるかも知れませんが、両者の大 きさ&生息地から想像すると楽しく魅力的です。 満月:そんなに大きな車海老なら食べてみたい。 しわくちゃのタオルケットときゅうりかな 足立 隆 特選:朝比古 健介 満月:わびしい。でもどういう取り合わせなんだろう。 朝比古:作者の「想い」の無さがいい。「かな」がそこはかとなく可笑しい。日 常の些事でありながら、何故かシュールな感じ。手練。 健介:もし私の他にもこの句を採った方がおられましたら、その方たちとの暗 黙の了解ということにして、ひとまずノーコメントと致しましょう。 傘さしてなんの音でしょほうせん花 鬼灯 けん太 安伸 古時計 満月:なんだかとぼけている。ほうせん花のはじける音は普通傘にはあたらな いから、それと別に雨が降っているのか。雨の音をほうせん花に「あんただね」 とにおわせているのか、はっきり鳳仙花に「あの音はなに?」と聞いているの か。軽い句だがこれはこれでとぼけ感を楽しみたい。 安伸:童謡のような語り口が小気味よい。 |
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けん太:メルヘンぽい世界。この無邪気さもわたしたちが見逃しているひとつ かもしれない。ボクの愛唱句になりそう。 古時計:ほうせかのはじける様になんの音ひろがります。 満杯の自転車置場求愛のよう 宮崎斗士 ぴえたくん 安伸 洋子 またたぶ:取り合わせイイと思う。「のよう」で落ちてしまった。私には代案 が思いつかない。 満月:<求愛のよう>がちょっとこなれていない感じ。上五に持っていった方 が落ち着いたか。このままだとどうしても一義的な解釈におわりそう。 安伸:求愛の猥雑なところをとらえてる。ただ「満杯」がいまひとつ決まって いないし、「のよう」が不器用。 ぴえた:崩れるように迫って来る感じがよくわかります。 告白や矢車草の青とのみ 洋子 特選:満月 秋 秋:「青とのみ」とした所が切なく、こちらに響いてきた。 満月:ああ、これいいなあ。そう、そうでなくっちゃ。これは俳句そのものって 気がする。<矢車草の青>が大変うつくしく恥じらいがある。 新涼のチャックが開いてゐたなんて 白井健介 いしず 薫 帽子 満月:そりゃ涼しかったでしょう。 薫:溢れる新涼感。旧かなも効いているのでは? ほろ酔いの戦車がせり上がる歌劇 中村安伸 特選:帽子 しんく 逆選:(h)かずひろ またたぶ:敵を殺してハイになった戦車。「歌劇」がオチめいている気もする のだが。 満月:うーーん、かなり要素が多すぎて。。かなり自分勝手なつくりに見え るが。 しんく:ヘリコプターが登場するミュージカルが、あるらしいが、ヘリにして も戦車にしても、もしほろ酔いなら近づきたくないなあ。 和夫:(選)ボーマルシューの3部作喜劇の何部だったか忘れたが「フィガロ の結婚」スペイン・せびりヤの街を舞台に伯爵夫人の結ばれる物語に、口八丁 手八丁の床屋の人気者フィガロが鼻歌(『何でも屋の歌』)で登場してきた一コマ と、ほろ酔い加減で競り合えた数十年前の中古車相場のウハウハ加減がアリア の臨場感として鳴り止まなかった。 (h)かずひろ:「ほろ酔いの戦車」というイメージは新鮮に思いました。 |
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2点句 十六夜の起点となりし肩車 朝比古 秋 帽子 またたぶ:着想きれい。「し」がホトトギス的落ち着きというか、老成を招い たようで残念。 満月:<十六夜の起点>と<起点となりし肩車>とがそれぞれなかなかおもし ろい展開を感じさせるんだけど、それがこう並ぶといまいちすっきりひびき合 わない。 あずさ:肩車をしてもらったのはいつの日だったか。見晴らしがよくなって、 気分が高揚する感じを、うまく捉えている。 秋:起点が肩車なのだから追憶なのだろう。詩情感にうたれました。 和夫:(特選)親戚が集い子供らと戯れる微笑ましい様子と憧憬を空想して特 選とした。 知昭:(選) 花野行き人力車には葦が乗る ぴえたくん 特選:けん太 満月:イメージが<花野>と<葦>とに分離する感もややあるが、花野をゆく 人力車の絵は不思議な雰囲気があっていい。葦もこの場合は合っていると思う。 けん太:難しいことを考えずに、気持ちのいいリズムや何となくの言葉の心地 よさを味わうことができました。言葉の躍動感、大切にしなければいけないポ イントのひとつのような気がします。 脱がしても脱がしてもまだ少女かな いちたろう 主水 凌 逆選:あずさ またたぶ:「まだ少女」と来られるとロリコン解釈先行するのみ。どう読めば 詩にとれるでしょうか。 満月:あせっている登場人物の様子が見えておかしい。 あずさ:誰が書いた句でしょうね。このオヤジ度は逆選です。 凌:少女の中の異界へ引きずり込まれてゆくような・・ 知昭:(逆選) 蝉しぐれ口車にものってみたい 古時計 南天 凌 逆選:朝比古 凌:川柳、という捉え方失礼かも知れないが、この人を食った捉え方はやっぱ り川柳だと思わせる上手い俳句。それもかなり高度な・・。 朝比古:「そうですか、私はのってみたくないです。」と答えてしまいそうな句。 「蝉しぐれ」はいかにもとってつけたような感じがする。 満月:もうすこし表現を考えてほしい。特に<にも>は失敗だと思う。 南天:虚構であっても、そうだよね、と思わせる。 知昭:(選) |
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1点句 五色の洞あやし続ける観覧車 またたぶ 明虫 満月:<五色の洞>ってなんだろう、<あやす>って?次々疑問が湧いてくる が、観覧車の実景の描写に過ぎないのかもしれない。言葉を飾って中身がつい ていかなかったような。 明虫:観覧車のハコがフラフラ揺れるさまを「あやす」といったのは同感。「続 ける」は時間的に間延びした感じなのだが。 和夫:(選)洞が峠としておこっと。 昼顔の夢ララ中古車センター 南天 またたぶ またたぶ:人にとって「現」が表、昼顔にとっては「夢」が表。だから、やや 「馬から落ちて落馬」感があるが、「ララ中古車センター」のお茶目さに抵抗で きなかった。 満月:<ララ中古車センター>はそういうCMがあるのだろうか。昼顔と中古 車センターを合わせたダレ感というか退廃感のようなものはなかなかいいと思 う。お昼のテレビで流れていたらかなりくたびれ感のあるCM的感じは<夢> が浮いてこないほど日常的疲労を覚えて<昼顔>を塗り込めてしまうよう。 あずさ:中古車センターの独特の俗っぽさを捉えている。 空車過ぐ銀河鉄道きれぎれに 秋 またたぶ またたぶ:上五にも続きにもぜひとも生かしたい詩情がある。ただ、共存させ るのはもったいないので、別々に生かしてもらえないでしょうか。 満月:単に夜の列車が通っていっただけのような気も。絵としてはきれいな感 じもあるが、<銀河鉄道>というからにはあの世へ行くんだよね?そんな感じ の句ではないのでちょっと?? 新涼やハザードを出す郵便車 たか志 洋子 満月:「ハザード」を思いっきり調べてしまった。よく使われる言葉だったの ね(--;。でも車で<ハザード>だと玉突き事故では? ずぶ濡れになって星から帰ったの 凌 満月 またたぶ:内容は好きなんですが、この構文で勝負するのは不利なんじゃない かと。 満月:有無を言わせぬセリフ。女の子的甘ったれた風のくちぶりが、実はひとく せありそう。 |
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脱走す荷車ひいて捜しをり しんく 古時計 満月:何を? 古時計:脱走と荷車がいい。 冬菜畑自動三輪大車輪 いしず しんく 満月:まあ、これだけなんだけど、これはこれでそれなり絵になっているとい うか。 しんく:自動三輪の形が好きという理由だけでいただきました。 一之:(逆選) 草いきれ薙ぎ来し車輪25時 またたぶ 隆 満月:言葉を詰め込みすぎ。<薙ぎ来し>はちょっと無理だと思うし、<車輪 25時>はいよいよわからない。 盆景のニンゲンつぶす指に露 南天 明虫 明虫:盆景のニンゲン、の着目に同感。盆景にミニ人形を置くのは一般的とし て、そいつをつぶすのは異常でなぜつぶすかが判らないのは読者として困る。 つぶしたから露がついた、という連想も気になる。 満月:<指に露>がこわい。つぶしたら虫なら汁が出る。人間なら血が出る。 和夫:(選)盆景が気になっただけ。 夏の日に未練残すかペディキュアは (h)かずひろ 斗士 逆選:健介 満月:うーーん、さっさと剥いだ方が。。。 斗士:「ペディキュア」って確かに夏のイメージがある(俺的には)。共感した。 健介:“芸の無さ”が目立ってしまう“即き過ぎ”という感じがしちゃって…。 ピーチボール追って追って夕べ糸車 秋 安伸 逆選:南天 あずさ:ピーチボール(桃玉)?中に桃太郎が入っているのか? 満月:「ビーチボール」のタイプミスとして読みます。ビーチボールを追って ゆくと、夕方には自 分が糸車になっている?ちょっと狂気みたいなところは出ていると思うが、< ビーチボール追って追って>も<糸車>も何かの喩のよう。どちらかを具象に しないことには成り立たない気がするんですが。 |
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安伸:「糸車」が唐突なようだが、意外とはまってる。「追って追って」のリズ ムもここちいい。 南天:消極的な逆選。糸車が唐突で、イメージが結べなかったので。 薔薇十字探偵の不機嫌な秋 千野 帽子 南天 逆選:薫 逆選:凌 またたぶ:確かに「秋」は便利な季語だが、安易な使用に思える。せっかくの イントロなのに。 明虫:映画の題名のようで期待感は高まったが言葉数ほどには句意が伝わって こず欲求不満がのこった。 満月:<薔薇十字探偵>という探偵さんなのかな?それとも<薔薇十字>なる ものがあって<探偵の不機嫌な秋>なのだろうか。後者だとして、薔薇十字と はなんだろう。そういう名前の秘密結社が暗躍していて、それに関した有効な 情報をつかむことのできない探偵が不機嫌になるんだろうか?全編雰囲気だけ になっているのではないかな。 南天:言葉の組み合わせが魅力的。陳腐になりかけかもしれないが、こういう 雰囲気は好き。 凌:言葉がきゅうぎゅう詰にされていて、どこを切っても、どんなドラマでも 作れそう。 薫:秋、が動くかなと思うのですが、京極に夏では即きすぎだし。それとも私の 知らない榎木津エピソードが??(狂骨の夢以降、未読)ということで偏愛の 逆選。 その他の句 ヤン・ゴンで車中ろう城秋の影 しんく 満月:上五中七で一体どうなるのかとわくわくしたんだけど、<秋の影>はあ いまいで安易に感じます。 健介:「ヤン・ゴン」というのはミャンマー連邦の首都 自転車を駆る青春17きっぷなく 主水 満月:さわやかですが、とっても安易。 車座の恐竜消えし富士の山 明虫 満月:<富士の山>がまんま銭湯のペンキ絵に見える。でもこの恐竜たちは何 を話していたのか、そして何をしに富士に消えたのか、ちょっと気になる。 あずさ:恐竜が車座にいたなんて。富士山も奥が深い。 秋風やホスピスに遺る車椅子 いしず またたぶ:季語と内容が近すぎて、自己完結している。 満月:<遣る>に作品構成上の疑問を覚えた。<遣る>人である登場人物の行 |
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為となっているが、一句の中で<秋風>の中の<車椅子>という景色が際だっ ているので、人物とその意思はかえってうっとうしい。<車椅子>の側から書 いてほしかった。 健介:「秋風や」はやはり即き過ぎですよね。 木馬らが跳ねては消える青田かな けん太 満月:最後の<かな>はきらいだが、あとはとてもすてき。<跳ねては消える >でかなり複数の感じが出るので、<木馬ら>の「ら」はちょっとうるさい感 じもする。 受験子よ車内吊にも伏字あり 主水 明虫:車内吊に伏字があったという発見に共感。でも受験子ではツキすぎなの では。 満月:なにが言いたいのだろう。 玉手箱こころ沈ませないために 明虫 満月:で、何が出てきたんでしょう? 顔といふ面積を掌で覆ふ 山口あずさ 逆選:秋 満月:ずいぶんと大顔の人を思い浮かべた。 秋:これでは何も分らないし、面白く無いですが。。。 たたまれし車椅子ひとつ落蝉や (h)かずひろ 逆選:帽子 満月:うーーん、破調はかまわないんだけどリズムがあまりに悪い。<落蝉や >を上五に持ってくるだけでもずいぶん納まると思うが。 あずさ:車椅子に落蝉。時代遅れのステレオタイプ。「落蝉」ということは、車 椅子の主は亡くなったのだろうか。もしそうだったとしても、パラリンピック が脚光を浴びる時代、もう少し違った表現があるのではないだろうか。 知昭:(特選) コーヒーをホットで頼む厄日かな たか志 逆選:斗士 満月:うーーん、、、<厄日>というかなり料理できそうな素材なのに<ホット コーヒー>、、、ずいぶん軽い厄日だ。 斗士:上五中七が平板。 健介:失礼ながらこの句は全然おもしろくない。“ポットで頼む”とするなら ちょっとは意外性も出てこようかと思うが。「あ、ミルク、ボトルで」という ホンモノの“工藤ちゃん”のあの台詞が懐かしい。 |
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青嵐来て貞子忌の車井戸 千野 帽子 逆選:しんく 逆選:満月 しんく:すみません、ホラー映画は嫌いなので。 満月:貞子さんって誰?<青嵐>と<車井戸>の取り合わせはとてもいいのだけ れど。でも好きだから採っちゃおう。 あずさ:リング。 健介:「青嵐」というのは「来」たり“過ぎ”たりという捉え方をすべきもの ではないだろうと私は認識しているので違和感を覚えます。 蚊柱と火柱と人柱かな 満月 逆選:ぴえたくん 逆選:安伸 逆選:古時計 ぴえた:なぜみっつ並べようと思われたのか、作者に聞いてみたい作品です。 古時計:こういう句理由なく好きでない。 |
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