第29回 青山俳句工場向上句会選句結果

(非売品:売ってはいけない。)

向上句会も残り少なくなりました。

名残を惜しんでくださる皆さんに、深く感謝いたします。

ノウハウを教えて欲しいというメールもいただきいました。

句会のまとめは、ワープロソフトと表計算ソフトを使用しました。

語の置き換え機能を使って、タブキーを挿入し、これをエクセルにコピー& ペーストしてデータとして並べ替えられるようにして作業を進めました。

詳しく知りたい方はご遠慮なく山口までメールしてください。

なお、こちらももうすぐおしまいですが、選句結果のダイジェストを、メルマ ガでもお届けしています。iモード対応の『旬の俳句集』もあります。どちら も無料です。

投句:白井健介、凌、田中亜美、中村安伸、千野 帽子、けん太、いしず、朝比古、合歓、秀彦、またたぶ、ぴえた、足立隆、小島けいじ、古時計、いちた ろう、しんく、秋、みずくらげ、(h)かずひろ、萩山、遊月、後藤一之、和夫、岡 村知昭、山口あずさ

全体的な感想

(h)かずひろ:謹んで選句いたしました。

いちたろう:次で最後の向上句会だとは思えません。とても残念です。いつか 再開するときにお手伝いできるようにパソコンの勉強をしようと思います。何 年も前に青山俳句工場の存在を知り共感していましたが、ようやく向上句会に 参加できるようになってまだ1年にもなりません。とても残念ですので、ほん とうに向上句会がなくなるようでしたら、恥をしのんで本句会に参加させてい ただこうかと思います。ほんとうに今までありがとうございました。

けいじ:時間が無くて選句のみです。大変失礼いたしております。選句時間が 無さそうな時は投句は控えていたのですが、そうすると自分の唯一の句会の場 が失われてしまうので、今回は無礼を承知で参加させていただきました。

けん太:一年間ありがとうございました。ぼくにいつも刺激をくれた句会でし た。みなさんが付けてくれるひとことひとことがとてもうれしかったです。新 しい年もがんばります。どうぞよろしく。

ぴえた:虫偏の文字を使うのもOKですか?とこっそり出題なさった工場長さ まに確認したら、だめかもーって言われたので「虫」に悩みましたが、虫偏の 文字を利用された方が多かったようなので、しよつくでした。

またたぶ:詠む方も、選ぶ方も苦し紛れでした。次回出直します。(我ながら心 配…)

みずくらげ:自分の作品がひどく色あせて見える。スタッフのみなさまに、感 謝。ありがとうございました。

秀彦:初めて参加させてもらいました。多彩な作品は読んでいて楽しかったで す。少し「前衛風」の作品が多いのが気になりました。本当の前衛に出会いた いとも思いました。

秋:まず、あずささんにお礼申し上げます。長い間楽しませていただき、本当


にありがとうございました。いろいろな句想にチャレンジしてみました。若い 方方の仲間に入れて頂いて、自分も、まだ20代30代のつもりで句を作り、 楽しませていただきました。こんな場はもうどこにも無いでしょう。大変残念 で寂しい感じがしています。献身的に、あずささんの熱意と技術と時間で今ま で続けられてこられた訳で、止めたいと言われればそれ以上にはこちらは言え ません。本当にありがとうございました。再開されるようなことになりました ら、また、皆で集まりましょう。それまで充電しておきます。

朝比古:推敲半ばにして投句されたと思われる句が散見された。せっかく句会 にだすのだから、もう少し吟味した方が良いのになぁと思う。「みちのくの血 統」と「ちちろ虫」おもしろい、でも「垂るる」は違うだろ・・・とか、「朝 陽」は射すもので、照りつけはしないよなぁ・・・とか、「ふりむいてはお辞 儀する虫」下五を忘れちゃったのかしら・・・とか、結構いい発見や、いいフ レーズがあるのに、今一歩のところで、「あ〜ぁ」と思う句が多かった。 自 戒の念を含み、苦言を呈させていただきました。

帽子:「題」は、題なのか縛りなのか。とうとう最後までわからなかったなあ。

遊月:初めて参加しました。いろんな感性の句があって刺激的ですね。

隆:参加者の人数は殆ど増えていませんが、参加されたことのある方はどれく らいになったのでしょう。パソコンを使ってできるようになったら、もっと参 加者が増えるかとも思ったのですが。今年最後の選句、楽しませていただきま した。

凌:一ひねりも二ひねりもしているのに、妙に現実的に収まっていて挑発性が ない。別の言い方をすれば575という枠に収まりすぎて俳句そのものを挑発 していないという感じ。勿論、それは好不調の波だと思いますが、ここがなく なるのは残念。

知昭:じっくり読んでみると選べるものです。妄言多謝、遅刻多謝。

健介:忘年会疲れから体調も優れず、テンション思いきって下がっちゃってま す。明日にでも建て直せないとやばいんですけど……。

古時計:短い間でしたがとても楽しかったような苦しかったような9ケ月間で した。ありがとうございました。いつも締め切りぎりぎりの投句、選句でご迷 惑をおかけしました。山口あずさんに感謝、感謝です。

10点句

小春日のモデルの無理な姿勢かな   朝比古

特選:健介 特選:けん太 一之 またたぶ いちたろう あずさ

(h)かずひろ 隆 

(h)かずひろ:それでも絶やさぬ営業スマイル。

いちたろう:モデルに「小」という文字が似合うのはなぜでしょう。モデル出 身の女優「小雪」を思い出しました。無理な姿勢、というとバレリーナを連想 します。モデルでもバレリーナでも、ちょっと無理な姿勢というのは「粋」に 通じます。すました感じは様式美にも通じます。自由なことは楽しいことです が、それでもどこかに「形」を持たなければ何も表現できません。「形」に対 して意識的であろうとするところは、「俳句」にも通じます。どなたの句なの か楽しみです。

けん太:ちょっとエロチックで、ちょっとのどかそうな。不思議な感じがしま


す。想像力を大いに使って鑑賞しました。

健介:「モデル」といってもいろいろですし「無理な姿勢」ってのもさまざま。 ぜんぜん具体的じゃないんだけど、勝手に妄想を膨らますってことにして◎。

隆:無理な姿勢を取らせているのは画家なのだが、モデルと画家の関係を想像 する。特に小春日である必然性は感じないが、SMとも取れますが、無理な姿 勢が気に入りました。

あずさ:お疲れさまです。

8点句

泣きさうと言はれて泣く子草の花   白井健介

特選:朝比古 特選:あずさ 知昭 秋 またたぶ (h)かずひろ 

またたぶ:ホ****の選みたい、と思いつつも、結構素直に共感できた。

秋:赤ちゃんも、人見知りの頃はそう言うことがあります。特別なことではな いけれど、草の花と良く響きあって気持ちの良い句でした。

知昭:手堅いですね。

朝比古:気持がほのぼのとしてくる。季語ははまりすぎているくらいはまって いる。一読手練の句。

あずさ:あー、わたしにもそういう時代があったと思わずノスタルジー。はめ られたというような気もしないではないが。。。

(h)かずひろ:願わくば、キレそうと言われてキレる17才に育たぬことを・・・。

人間に火種などあり虫の夜   秋

特選:秀彦 特選:古時計 特選:ぴえたくん けいじ 隆 

ぴえた:歳時記を調べましたが「虫の昼」はあっても「虫の夜」はありません。 季語じゃないのですね。季語の「虫」はくさむらで秋に鳴く虫のことなんです ね、しかも雄のみ。人家には背を向けていても秋の虫は鳴きながら人間を観察 しているようで選びます。

古時計:人には何か事をおこす要因をかくしもっているものがありそれを虫と いう。

秀彦:あっ、と思いました。それ以上この句に対して言う言葉が見つかりませ ん。全面的に共感いたしました。

隆:人間はいずれにしろ危険な存在。人にも、動物にも、物にとっても。

7点句

蟷螂の枯れて一輪挿にあり   遊月

特選:凌 特選:一之 亜美 ぴえたくん 隆 

ぴえた:茶色く変色したかまきりがドライフラワーのように言われていて面白 いです。

隆:良く見ると薄茶色にひからびたカマキリであった。しばらくは、捨てずに そのまま花と一緒に眺めている。


6点句

鶏頭に青いホースが伸びてゐる   後藤一之

特選:隆 凌 帽子 朝比古 ぴえたくん 

ぴえた:鶏頭はお花でニワトリがいるわけじゃありませんよね?ケイトウは赤 くて脳のようなウネウネがあって、そこに青いホースは唐突なようで実は、ケ イトウの赤が動脈なら青いホースは静脈かってくらい親近感が湧きますから不 思議です。動脈と静脈が人体図で赤青どっちだったか記憶が定かではありませ ん。間違ってたらごめんね。

朝比古:個人的にはものすごく好きな句。ただごとではあるが、鶏頭の質感に なんともいえない感慨を覚える。ただ、色の対比がわざとらしいのと、散文的 表現に終始しているのが特選に推せなかった理由。

帽子:色をただ対照しているだけなのだが、それがなかなかよかったりする。

隆:鶏頭の赤とホースの青。しかも青いホースは最もありふれた色。景色は何 でもないが、それが蛇のようにくねくねと鶏頭の方に伸びていると書かれると 面白くなる不思議。

団栗はポストに入れないで下さい   ぴえた

特選:みずくらげ 凌 遊月 朝比古 秀彦 

みずくらげ:一瞬にして、情景のすべてが…、家並み、佇まい、人物までもが 必然の如くに濃密に展開する凄さ。最高の映画のワンシーンのすみっこの石こ ろすら必然であるが如くにです。この情景の空の気配を手にいれるためだけ に、優秀な映画監督なら何日間も待つでしょう。遠くぽつんと、家路につく女 の子の後ろすがた…。どうぞ、あなたの明日がしあわせでありますように。

秀彦:そのポストは羨ましいような環境の中にあるわけです。悪戯小僧に手を 焼いてポストにこんな張り紙をしたのでしょうか。ポストの周辺の景色が見え てくる佳句です。

知昭:いい意味での田舎くささを感じた。

朝比古:平和な山村風景を髣髴とさせる句。「入れないで」と言っていながら、 本当は、入っているとうれしかったりするんじゃないかなぁなどと思わせる。

遊月:ごめんなさい。入れたのは僕です。銀杏黄葉はこないだ送ってしまった ので。

降誕祭夫妻交互に告白す   足立隆

遊月 健介 みずくらげ しんく けん太 けいじ 

けん太:一波乱ありそうな、そんな雲行きが伝わってきます。でも、ホントは その逆の状況なんでしょ!それではつまらない。ドキドキしない・・。そんな 訳で、最後まで選句しようかどうか迷いました。

しんく:団鬼六氏はスワッピングのことを友情と呼ぶ。

健介:何やらかなり深刻な事態になりそうな気配が(他人事だと思うと) ちょっといい(?)。

遊月:夫は何を告白し、妻は何を告白したのでしょうか。とっても気になります。

みずくらげ:こわい! その恐怖だけで、とっさに選んでいた。ほんとうに、


こわい。こわ過ぎる。主よ…。

G線上のアリア僕らは冬の蜂   小島けいじ

特選:遊月 特選:またたぶ 一之 (h)かずひろ 

(h)かずひろ:「G線上のアリア」という「フジテレビ月9ドラマ的趣き」が好 みの分かれるところ。

またたぶ:ちょっと「酔ってるな」とは思いますが、好き。

遊月:勇気凛々になれました。すがすがしい空気を感じます。

4点句

かえりみて追風掴む渡り蝶   合歓

秀彦 またたぶ けいじ いちたろう 

いちたろう:ぼくも追い風を掴みたいものです。掴むのが下手だから、あこが れます。読者のコンプレックスや憧れをうまくつつくと、共感を得やすいです ね。読者の素直な気持ちを引き出しやすい句になるのかもしれません。

またたぶ:ちょっと「演歌入ってるな」とは思いますが、採らされた。

秀彦:すこし意味的に重なっているのが気にはなりましたが、「追風掴む」と いう措辞に一票。

回虫のかたちで考える師走   中村安伸

帽子 知昭 秋 あずさ 

秋:よく分からないけれど、何か師走に長々考えるってそれだけで面白かった。

知昭:みんな走っているのに考えるとは。渋いユーモアを買って。

帽子:考える余裕すらないので、羨ましい。

あずさ:回虫ってどんな形をしているのだろう。腸の中で曲がりくねっている のか。(今「まがり」と打ったら「間借り」と出た(^_^;))

バビロンの葦の夢ごと蚊帳たたむ   またたぶ

亜美 ぴえたくん しんく (h)かずひろ 

(h)かずひろ:蚊帳を空中庭園にたとえた発想をおもしろく思いました。

しんく:バビロン・バイ・バス。ボブ・マーリィも今では夢のごと。

ぴえた:葦(アシ)と茅(カヤ、萱)がぶつかる気がしますが、繊維の源の生 息していた地の夢まで遡り、畳む発想にひかれました。

泣き虫でおしゃべり好きな寒鴉   古時計

特選:秋 健介 ぴえたくん 

ぴえた:寒い時期の鴉の濡れ羽色はとても冷淡に感じるのですが、人は(鴉は) 見掛けによらないんだよーと媚びられているようで、実は抵抗を感じながらも 楽しませてもらいました。

健介:こういう鴉って本当に居そうだなぁ…と納得。


秋:真っ黒いのは鴉の性ではない。鴉が白かったら、泣き虫でおしゃべり好き に思えるだろう。

十三夜海を見てゐるさなだ虫   後藤一之

特選:知昭 特選:しんく 

しんく:樋口一葉著「十三夜」実らぬ恋の主人公。海を見るさなだ虫が少しだ ぶりました。

知昭:ある種のパターンを思い切りひっくり返してくれた勢いに。

3点句

入口のすぐまうしろがもう出口   凌

特選:帽子 けいじ 

帽子:この無意味感はなんだ。逆選にしてもいいくらい特選だ。

あずさ:迷路?

虫鳴くや団鬼六の京旅行   しんく

帽子 健介 けん太 

けん太:これからなにか始まりそうな。そんな妖しい気配に惑わされて。団鬼 六に寄りかかっているので、それがどれだけ普遍性?をもちますやら・・・。

健介:御供したいという思いもちょっと(?)はあります。

知昭:怖そうだけど、面白そう…かな。

帽子:季語との取合せがいい。「虫」の題でこの中七下五を思いついたのだと したら凄い。

ありふれた冬の雨音ひろいけり   古時計

朝比古 秋 いしず 

秋:冬の雨音って静かで懐かしいっていう感じがします。そんな感じを詠まれ ているのではないかと、共感しました。

朝比古:冬の雨音がありふれているというのは言い得て妙。冬の座五に飛躍が 欲しかった。

本の虫牛乳壜の底に棲む   足立隆

秋 みずくらげ いしず 

みずくらげ:十代の頃、こんな友達がいた。度の強い眼鏡の奥の奴の目は、手 のつけられない不良だった俺の、いつだってオアシスだった。文学の話、哲学 の話、新聞部の話、将来の話…。女の話はしなかった。あいつ、どうしてるの か…。

秋:ミルク好きの読書家っていうところでしょうか。なかなか凝っている。

あずさ:作者の意図は別のところにあったのかもしれないが、「牛乳瓶の底」が 分厚い眼鏡を思い出させてしまうことは避けられないだろう。


真ん中をレールが分ける銀河かな   合歓

帽子 朝比古 一之 

朝比古:よく出来ている。類想感は否めないが、俳句の骨法を掴んでいる作者。

帽子:銀河鉄道的なものは好きではないが、句としてきれいに立っている。

絹目封筒とは秋風を食べて来た   中村安伸

凌 みずくらげ あずさ 

みずくらげ:むつかしいことは分からない。しかし、手許に届けられた秋風の 清冽な気韻は感じ取れる。横溢として。

あずさ:絹目封筒で詠むとは実ににくいことをしますね。しかも秋風を食べて 来ただなんて。。。目の付け所に感心しました。

虫の音を消しつつ急ぐ通夜の家   萩山

特選:(h)かずひろ 秀彦 逆選:遊月 

(h)かずひろ:非日常的な緊張感が伝わってきます。

秀彦:秋の夕暮れの原を通夜に向かい急ぐ作者の心の哀しみが虫を黙らせたの でしょうか。

遊月:ずいぶん昔の日本映画のワンシーンを見たようでした。いまひとつ物足 りなかったです。

振り向いてはお辞儀する虫   凌

特選:亜美 古時計 逆選:秋 

古時計:遠慮しながら頭を掻いている忠実な人。

秋:この字足らずは作者の計算だと思いますが、その計算がいやです、賛成で きません。

柿もぐやふと蘇える記憶あり   萩山

特選:けいじ 古時計 逆選:帽子 逆選:しんく 

古時計:私もこの記憶に出逢うことがあります。

帽子:ただの思わせぶり。

しんく:ありはいただけません。

2点句

小春日や俺の虫唾が逡巡す   山口あずさ

秀彦 いしず 

秀彦:ニヤリとする句です。小春日のそののどかさの中で、虫唾の走ることが あったのに、「俺の虫唾」と男らしく言いながら、逡巡してしまうところが可 笑しいです。


凍月をかじる奄美の黒うさぎ   遊月

けん太 古時計

けん太:奄美という南の島と凍月とがどんな関係になるのか判りませんが。 黒うさぎと凍月の取り合わせはおもしろいと思いました。結構素直な気分の句 だと思います。

古時計:絵的ですきです。

掃除機へいま吸い込まれし秋の虫   けん太

古時計 みずくらげ 

みずくらげ:とうとう秋も終わったわ。そうだ、今夜は鍋にしましょう。男は これくらい虫に対して冷酷な女性を妻にすべきだ。きっと家事は上手だし料理 はうまい。殺生は許しがたいが、何故かすがすがしい。秋の虫に合掌。

古時計:いろいろな心の中を掃除機に吸い込ませたい。

みちのくの血統睡るちちろ虫   秀彦

特選:いしず 

あずさ:「ちちろ虫」コオロギの異称だそうな。「血」と「ち」を掛けたのでは 駄洒落だし。。。

受験期や蛹のままで逝きし君   (h)かずひろ

隆 遊月 

遊月:よく知っている18歳の少年が亡くなりました。彼は受験とは全く無縁 の世界にいたのですが。

隆:蛹の評価のしかたで別れる句です。

蜘蛛男においのむこう姉おどる   みずくらげ

しんく けん太 逆選:凌 

けん太:これはもうおかしい。楽しい。こんな発想どこからでてくるんでしょ うか。俳句っぽくはないかもしれませんが、とても好きです。

しんく:仮面ライダー第一回のゲスト。明日はこうもり男さん、来てくれるか な。いいとも!

凌:「においのむこう」がわからない。

1点句

一寸の虫と呼ばれて弓である   ぴえた

亜美 

あずさ:五分の魂を喚起するので、ちょっと面白いような気もするが、一寸の 虫が弓なりになるというのは絵としてあまりにも当たり前。


手塚治虫のいた国に今年も雪が降った   小島けいじ

しんく 

しんく:手塚治虫と雪から連想するものは何だろう。やはり、レオの白い肌 か!

知昭:いきなり強引に読者をつかみとろうとしている感じがあって、引きつけ られました。しまった、とれたな…。

照りつける朝陽すべてをかぎつける   いちたろう

あずさ 

あずさ:朝日には鋭い嗅覚がある。納得の一句。

残る蟲母校へピザの宅配車   白井健介

知昭 

知昭:上五がもう少しなんとかとは思うけど、いい構図。

ドモホルンリンクルのバカ秋深む   岡村知昭

健介 

健介:何故に「バカ」と仰っているのかは謎ですが…。

コスモスや雲湧く下に戻れない   秀彦

遊月 

遊月:「戻れない」と言われてしまうと、戻りたくなって、戻れなくて、悲し いです。

夕陽遠くモスラの影も羽虫ほど   いちたろう

またたぶ 

あずさ:遠くの物が小さく見えるということをモスラを遣って言ってみただけ のような気がします。遠近法俳句。

雪虫のやう てつがくを語り終へ   田中亜美

一之 

あずさ:力無く舞ってしまうということでしょうか。

ファックスの達筆文字や秋うらら   山口あずさ

いしず 

あずさ:母宛のファックスはなぜか達筆。我ながら毒のない句。


小児科に柿の木がある法隆寺   けん太

凌 

知昭:下五の展開についていけるかどうか。

無標の蝶翔つやランゲルハンス島   またたぶ

知昭 逆選:秀彦 

秀彦:「無標の蝶」という造語(?)は良いのですが、どうしても受け入れが たかったのは「ランゲルハンス島」です。もう二三十年前に現代詩の世界で使 い古された常套句に俳句の世界で再会するのは耐えられません。

知昭:天然自然のよろしさが出てます。

童貞が防虫剤の代わりなり   岡村知昭

亜美 逆選:(h)かずひろ 

(h)かずひろ:残酷な女のテーゼ。少年よ堕天使になれ。

あずさ:虫除けになるだろうか。。。というより、まだ虫になったことがないの よね?

その他の句

黄泉行きの舟に遅れて冬の虫   いしず

あずさ:生き残ってしまった冬の虫を詠むにはあまりにも当たり前なのでは。。。

冬の日の王様の虫様突起   千野 帽子

あずさ:どう読めばいいのかわからなかった。「様」を「さま」「よう」と読ま せることにもそれほどの面白みはない。

寒菊の刻限片恋ふことあれば   田中亜美

あずさ片恋いが寒々しくも花のあるものだというような意味でしょうか?だと したら、発見と呼べるほどのものでもないような。。。

ひどいかぶれの満開の茶花かな   秋

あずさ:漆にでも触ったのでしょうか?

月跳ねるいちぬけたなぞとはいいません   みずくらげ

あずさ:月そのものが跳ねたということなのだろうが、(ということは月の地 震か?)、月の兎が跳ねたような印象を受ける。いっそうのこと、「月刎ねる」 なんてのはどうだろう。

腹の虫でんぐり返し古酒を酌む   いしず

あずさ:古酒があまりに高価だったというような落ちではないですよね?


蓑虫に掌を睡らせてゐたるかな   朝比古

逆選:ぴえたくん 

あずさ:蓑虫ってどれくらいの温度なのだろう。

ぴえた:「蓑虫を掌に」と、てにをはを置き換えると好きです。

生き延びんと歩き続ける寒夜の乞食   (h)かずひろ

逆選:知昭 

知昭:そのまんま。味もそっ気もなくて。ここからどうするか。皆様はどうさ れますか。

卒業まで秒殺の恋走り抜けろ   千野 帽子

逆選:みずくらげ 

みずくらげ:秒殺? 分からない。数秒だったらいち押しの特選。若い頃にはあ るんです。特に卒業間際には。凝縮し,昇華し、なお生臭く、きらめくような 数秒が。しかし、たいがい失恋。それまであったはずの長い長い時間とチャン スを受験勉強に費やしてきた罰です。不器用で純で…。秒殺だと中途半端な気 がする。作者はまばゆいばかりの青い山脈を、あえて嫌ったか。

無修正ビデオを流す学園祭   しんく

逆選:隆 逆選:あずさ 

知昭: 流すなーんなもん。一人面白いかもしれんけど、句としてもそれだけに なってる。

隆:無邪気。

あずさ:ユーモアのつもりだったのでしょうか。無知とういのは罪深いものです。

暮れしをり出ずりいるまま疳の虫   和夫

逆選:朝比古 逆選:健介 逆選:一之 

健介:この句、私には全く意味が分からないので…。

朝比古:日本語として、成り立っていないと思う。三段切れはまぁ赦せるとし ても、旧かな新かな混在はちょっと。どう読めばいいのか?誰か教えて。